年末が近づくと、会社から「年末調整の書類を出してください」と案内が届きます。初めてだと、見慣れない申告書が何枚も並んで手が止まりがちです。
この記事は、年末調整のやり方を初めて調べる20代の会社員に向けたものです。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」などの資料で確かめながら、次の3点を整理します。
- 年末調整とは何か、なぜ毎年やるのか
- 20代がまず出す書類と、書き方でつまずきやすい点
- 年末調整でできないことと、お金が戻る時期
先に結論を書きます。年末調整は、毎月引かれた所得税を年末に精算する手続きです。会社員は書類を出すだけで、多くの場合は確定申告が要りません。
年末調整とは「1年分の所得税の答え合わせ」
年末調整とは、毎月の給与から引かれてきた所得税を、1年分の給与が確定した年末に計算し直して精算する手続きです。
会社は給与を払うたびに、「源泉徴収税額表」という表で所得税を引いています。ただ、国税庁の資料によると、その1年間の合計は、本来納めるべき税額と一致しないのが通常です。理由として、次の3つが挙げられています。
- 税額表は、1年間ずっと給与が同じ額だと仮定して作られている
- 年の途中で扶養する家族が増えても、さかのぼって各月の税額を直さない
- 生命保険料や地震保険料の控除は、年末調整のときにまとめて差し引く
このズレを年末にまとめて直すのが年末調整です。引かれすぎていれば還付され、足りなければ追加で徴収されます。
国税庁は、勤務先で年末調整が済めば確定申告などの手続きは要らなくなると説明しています。会社員にとっては、書類を出すことが「自分の税金の申告」の代わりになっているわけです。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 より
年末調整の対象になる人・ならない人
対象になるのは、原則として勤務先に扶養控除等(異動)申告書を出している人です。1年を通じて勤めている人と、年の途中で就職して年末まで勤めている人が含まれます。
一方、次のような人は対象外です。
- その年の主たる給与の収入が2,000万円を超える人
- 2か所以上から給与をもらっていて、もう一方の勤務先に扶養控除等申告書を出している人(その勤務先の分は年末調整されない)
- 年の途中で退職し、年内に再就職していない人(一部の例外を除く)
対象外の人は、自分で確定申告をして税額を精算します。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」/「No.2665 年末調整の対象となる人」 より
令和8年分(2026年)の年末調整で変わったこと
まず令和7年度税制改正で、基礎控除と給与所得控除の見直しと、「特定親族特別控除」の創設が行われました。令和7年分の所得税から適用されています。
さらに令和8年度税制改正で、基礎控除と給与所得控除の最低保障額がもう一段引き上げられました。この改正は原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。
基礎控除の引上げ
令和8年分(と令和9年分)の基礎控除額は、合計所得金額に応じて次のとおりです。
| 合計所得金額 | 収入が給与だけの場合の年収の目安 | 基礎控除額(令和8年分) |
|---|---|---|
| 489万円以下 | 665万5,556円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 665万5,556円超 850万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 850万円超 2,545万円以下 | 62万円 |
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年収の目安は、国税庁が改正後の給与所得控除をもとに示した金額です。20代の会社員の多くは、いちばん上の行に当たります。
給与所得控除の最低保障額の引上げ
給与所得控除は、会社員の「必要経費」にあたる控除です。この最低保障額が、65万円から74万円に引き上げられました。給与の収入が190万円以下の人は、令和8年分の控除額が74万円になります。
今年は12月の年末調整でまとめて精算される
国税庁によると、令和8年11月までの給与の源泉徴収には変更がありません。毎月の給与からは、改正前の税額表で所得税が引かれてきました。
そのうえで、12月の年末調整で引上げ後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し、それまでに引いた額との差を精算します。改正後の税額表が毎月の給与に使われるのは、令和9年1月以降の給与からです。
そのため今年は、年末調整の結果が例年と違って見えることがあります。戻る額は人によって違うので、12月の給与明細と源泉徴収票で確かめてください。
扶養親族の所得要件と特定親族特別控除
扶養控除の対象になる家族の所得要件も変わりました。扶養親族は、合計所得金額62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)になりました。改正前は58万円以下でした。
特定親族特別控除は、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族が対象です。合計所得金額が62万円超123万円以下の場合に使えます。20代の会社員で関係するのは、大学生の弟や妹などを自分が養っている場合です。
※この章の内容は 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」/「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」/「昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)」/「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」 より
20代がまず出す書類と書き方の要点
会社から配られる主な書類は次の3つです。独身で扶養する家族がいない20代なら、書く欄はそれほど多くありません。
| 書類 | 主に何のためか | 20代独身の場合 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 年末調整の前提となる申告書。扶養する家族などを申告する | 家族を扶養していなくても提出する |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 基礎控除などを受けるための申告書 | 基礎控除の欄を書く。他の欄は該当がなければ空欄 |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料・地震保険料・社会保険料・iDeCoなどの控除 | 自分で払った保険料や掛金があるときに書く |
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扶養控除等(異動)申告書:家族がいなくても出す
国税庁の資料では、年末調整は原則として、この申告書を出している人の全員について行うとされています。扶養する家族がいない人でも、氏名・住所・マイナンバーなどを書いて提出します。
令和8年は、扶養親族の所得要件が12月1日から変わります。この改正で新たに扶養に入れられる家族がいる人は、申告書を出し直します。「異動月日及び事由」欄には「令和8年12月1日 改正」などと書きます(国税庁Q&A)。
基礎控除申告書:書くのは「今年の所得の見積額」
令和8年分の様式は、4つの申告書が1枚にまとまった「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。名前は長いですが、独身の20代が書くのは主に基礎控除の欄です。
ここに書くのは、その年1年間の所得の見積額です。つまずきやすい点は3つあります。
- 収入は、額面(手取りではない)の1年分を書く。12月分と冬の賞与の見込みも入れる
- 年の途中で転職した人は、前の会社の給与も合算する
- 副業などで給与以外の所得がある人は、その所得も見積額に含める
保険料控除申告書:証明書を添付する
自分で払っている保険料や掛金があれば、この申告書で控除を受けます。20代に関係しやすいのは次の3つです。
生命保険料控除 平成24年1月1日以後に結んだ新契約では、生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料ごとに次の表で控除額を計算します。3つの合計の上限は12万円です。
| 年間の支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 支払保険料の全額 |
| 2万円超 4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 |
| 4万円超 8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
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保険会社などから届く「控除証明書」を添付します。
なお、令和8・9年分は、23歳未満の扶養親族がいる人について一般の生命保険料控除の特例があり、控除額の上限が6万円になります(3つの合計の上限12万円は同じです)。独身の20代は上の表のままで構いません。
社会保険料控除 給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料は、会社が集計するので書く必要はありません。書くのは、自分で直接払った分です。たとえば、前の会社を辞めてから次の会社に入るまでに払った国民年金保険料や国民健康保険料がこれに当たります。このうち国民年金保険料は、金額にかかわらず、払ったことを証明する書類(控除証明書など)を添付します。
小規模企業共済等掛金控除(iDeCo) iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象です。給与から天引きされている掛金は、証明書類が要りません。自分の口座から引き落としている場合は、金額にかかわらず、掛金を払ったことの証明書類を添付します。
iDeCoを始めたばかりの人は、この欄の書き忘れが起きやすいところです。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」/「昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)」/「No.1140 生命保険料控除」/「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」 より
紙か、アプリ(電子)かは会社しだい
書類の出し方は会社によって違います。紙の申告書を配る会社もあれば、勤務先のシステムや、国税庁が無償で提供している「年調ソフト」で入力する会社もあります。
電子で出す場合は、保険会社などが発行する電子データの控除証明書を、紙の代わりにそのまま提出できる場合があります。方法は会社の案内に従ってください。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 より
年末調整でできないこと(確定申告が要るケース)
年末調整は万能ではありません。次のような場合は、年末調整とは別に確定申告が必要になります。
医療費控除・寄附金控除は確定申告で受ける
医療費控除は、確定申告書を提出して受ける控除です。会社に領収書を出しても、年末調整では処理されません。国税庁は、会社員が確定申告で税金の還付を受けられる例として、医療費控除・寄附金控除・雑損控除などを挙げています。
ふるさと納税は「5団体以内」が分かれ目
ふるさと納税も寄附金控除なので、本来は確定申告が必要です。
ただ、確定申告が不要な給与所得者等で、寄附先が5団体以内なら、「ワンストップ特例制度」が使えます。寄附先の自治体に申請すれば確定申告が要りません。6団体以上に寄附した年は、確定申告が必要です。
上限額の考え方や、入社1年目・転職する年の注意点は「20代のふるさと納税はやるべき?損しない始め方と注意点」で整理しています。
副業の所得が20万円を超える
給与を1か所から受けていて、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人は、確定申告をしなければなりません。副業の所得は、収入から経費を引いた後の金額で考えます。
その他、年末調整では精算されない人
- 給与の年収が2,000万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与と他の所得の合計が20万円を超える人
- 住宅ローン控除を受ける最初の年の人(2年目以降は年末調整で受けられる)
確定申告をする義務がない人でも、納めすぎた税金を取り戻すための「還付申告」はできます。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
※この章の内容は 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」/「No.2030 還付申告」/「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」/総務省「ふるさと納税の仕組み 税金の控除について」 より
年末調整のお金はいつ・どこに戻ってくるか
戻るのは、通常12月の給与
年末調整は、その年の最後に給与を払うときに行うので、通常は12月です。
納めすぎた分(過納額)は、原則として年末調整を行った月の給与で戻ります。会社がその月に納める税金から差し引いて、本人に返す仕組みです。1回で戻しきれない場合は、その後の月に順に戻されます。
反対に、引かれる額が足りなかった場合は、年末調整をする月の給与から追加で引かれます。
反映される月は会社によって変わることがあるので、正確な時期は給与担当に確認してください。
どこで確かめるか
確かめる場所は2つあります。
- 12月(年末調整をした月)の給与明細:所得税の欄に精算結果が反映されます。表示のしかたは会社によって違います
- 源泉徴収票:1年間の給与の額、控除の額、最終的な所得税額が書かれた書類です。年末調整の後、勤務先から交付されます
源泉徴収票は転職や確定申告で必要になるので、保管しておきましょう。
書き忘れに気づいたら
年末調整の後に扶養する家族の数などが変わった場合は、年末調整をやり直せます。期限は、源泉徴収票を交付する翌年1月末日までです。
生命保険料控除の書き忘れなどに後から気づいた場合は、まず勤務先に相談します。間に合わないときは、自分で確定申告(還付申告)をすれば、控除を反映できます。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」/「No.2030 還付申告」 より
転職した年・中途入社の年の注意点
前の会社の源泉徴収票を出す
年の途中で入社した人は、前の会社の給与も含めて、いまの会社で年末調整をします。そのため、前の会社が発行した「給与所得の源泉徴収票」を提出します。
国税庁の資料は、前職分を源泉徴収票などで確認できるまで年末調整を見合わせるよう会社に求めています。届いていなければ、早めに前の会社へ発行を頼みましょう。
離職期間に払った国民年金・国民健康保険を申告する
退職から入社までの間に、自分で国民年金保険料や国民健康保険料を払った人もいるはずです。その分は、保険料控除申告書の社会保険料控除の欄に書きます。払った分だけ控除が増えるので、忘れると損をします。
年内に再就職しなかった人は確定申告
年の途中で会社を辞め、その年のうちに再就職しなかった人は、原則として年末調整の対象外です。納めすぎになっている所得税は、確定申告(還付申告)で取り戻します。
退職後の手続き全体は「退職後の手続きチェックリスト」に、国民健康保険・国民年金・住民税とあわせて時系列でまとめています。
※この章の内容は 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」/「No.2030 還付申告」 より
年末調整は住民税にもつながっている
年末調整で精算するのは所得税です。ただ、ここで確定した1年分の所得は、翌年度の住民税の計算にも使われます。
住民税は前年の所得にかかる税なので、年末調整の内容は翌年6月からの手取りにも響きます。仕組みは「社会人2年目に手取りが減る理由|住民税はいつから引かれるのか」で詳しく書いています。
年末調整の後に手元に戻ったお金の使い道を考えるなら、「20代の先取り貯金のやり方」も参考になります。
よくある質問
年末調整とは、わかりやすく言うと何ですか?
年末調整のお金はいつ戻ってきますか?
年末調整の書類を出さないとどうなりますか?
医療費控除やふるさと納税は年末調整でできますか?
年の途中で転職した場合、年末調整はどうなりますか?
まとめ
- 年末調整は、毎月引かれた所得税を年末に1年分で精算する手続き。済めば多くの会社員は確定申告が要らない
- 令和8年分は基礎控除(合計所得489万円以下で104万円)と給与所得控除の最低保障額(74万円)が引き上げられ、12月の年末調整でまとめて精算される
- 20代独身なら、扶養控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書の3つが基本。所得の見積額は額面の1年分で書く
- 自分で払った国民年金・国民健康保険、iDeCo、生命保険料は申告しないと控除されない。国民年金・iDeCo(口座引落し)・生命保険料は証明書を添付する
- 医療費控除、6団体以上のふるさと納税、20万円を超える副業所得は確定申告が必要
- 還付は通常12月の給与で。源泉徴収票は保管しておく
まずは会社から届いた案内の締め切りを確認し、保険会社などから届く控除証明書を1か所に集めておくところから始めてください。
税金の扱いは、個々の状況によって変わります。自分のケースで判断に迷うときは、勤務先の給与担当者や税務署に確認してください。
参考
- 国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(PDF)
- 国税庁「昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)」(PDF)
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(PDF)
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「No.2030 還付申告」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」
- 総務省「ふるさと納税の仕組み 税金の控除について」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務相談に対する助言ではありません。 ※控除の可否や税額は、所得・家族構成・勤務先の運用によって異なります。正確な内容は勤務先の給与担当者・税務署でご確認ください。 ※制度の内容は2026年10月19日時点で国税庁・総務省の公式サイトで確認したものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。
