給与や仕事の中身ではなく、回数そのものが気になり始めるときがあります。「これで3回目になるけれど、多すぎないだろうか」という不安です。
先に結論を書きます。転職の回数を制限する法律はありません。そして「何回まで」という共通の基準も存在しません。
ただし、回数が増えるほど説明を求められる場面は増えます。この記事では、回数の代わりに見られているものを4つに分け、説明を用意する順番まで整理します。
転職回数に上限はあるのか|まず事実を確認する
転職の回数を制限する法律はありません。何回目であっても、応募することも採用されることも制度上は妨げられません。
「3回まで」「20代なら2回まで」といった数字は、採用する側の慣習や個人の感覚として語られているものです。業界によっても、同じ会社の中の部署によっても違います。
つまり「何回まで」という問いには、全員に当てはまる答えがありません。答えのないものを探し続けると、判断が止まります。ここは早めに手放したほうが前に進みます。
20代が仕事を変えること自体は珍しくない
前提として、20代で職場が変わること自体は例外的ではありません。
厚生労働省は令和7年10月に「新規学卒就職者の離職状況」を公表しています。令和4年3月に卒業して就職した人のうち、3年以内に離職した割合は大学卒で33.8%でした。短大等卒は44.5%、高校卒は37.9%、中学卒は54.1%です。
大学卒でも、およそ3人に1人が最初の3年で最初の職場を離れています。1回目の転職は、多数派ではないものの、特別な選択でもありません。
労働政策研究・研修機構の集計でも、転職者の比率は年齢が若い層ほど高くなっています。2024年7〜9月期の15〜24歳では、男性10.7%、女性12.8%でした。
※この章の数値は 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」/労働政策研究・研修機構「転職者の状況」より
回数の代わりに見られている4つのこと
採用する側が読み取ろうとしているのは、たいてい1つです。「次も同じ理由で辞めないか」という点です。
回数はその手がかりの1つにすぎません。実際に効いてくるのは、次の4つです。
1. 1社あたりの在籍期間
同じ「3回」でも、意味はかなり変わります。
- 3年・3年・2年で3回目 … 各社で一区切りついている
- 半年・8ヶ月・4ヶ月で3回目 … どこかに繰り返しの原因がある
回数が同じでも、前者で疑問を持たれることは多くありません。逆に後者は、回数を1回に減らしても同じ質問が来ます。問題は回数ではなく短さのほうにある、という場合が実はかなり多いです。
在籍期間が短くなりがちな人は、辞める判断そのものより、入る前の見極めを直したほうが効きます。入社後に「思っていた場所と違った」となる原因の切り分けは、職場に馴染めない20代へで整理しています。
2. 転職の方向がそろっているか
2つ目は一貫性です。ここでいう一貫性とは、同じ業界に留まることではありません。
- 職種を軸に業界を変えている
- 業界を軸に職種を広げている
- 扱う顧客の規模を段階的に上げている
このどれかで説明できれば、回数が3回でも「積み上げてきた人」に見えます。逆に、毎回まったく違う方向へ動いていると、回数が2回でも読み取りにくくなります。
軸をどちらに置くかで迷っているなら、転職で業界を変えるべきか職種を変えるべきかが判断の材料になります。
3. 辞めた理由を自分の言葉で説明できるか
3つ目が、実務上いちばん差がつくところです。
「人間関係が合わなかった」「残業が多かった」だけで止まると、聞いた側には次の判断材料が残りません。次の職場でも同じことが起きるかどうかが分からないためです。
説明は、次の3つをそろえると通りやすくなります。
- 何が起きていたか(事実)
- 自分は何を試したか(行動)
- その結果、何を条件として持つようになったか(学び)
3つ目まで言えると、辞めた話が「条件が明確になった話」に変わります。ここは嘘をつく必要も、無理に前向きに言い換える必要もありません。事実と行動を並べるだけで形になります。
なお、辞めたい理由がまだ言語化できていない段階なら、先に整理しておくほうが早いです。20代の転職判断基準|迷ったときに使える6つの観点と決め方の順番で、「辞めたい」を分解する手順を扱っています。
4. 直近の会社での実績
4つ目は、いちばん新しい職場での中身です。
職歴が長くなるほど、古い会社の話は薄れます。関心が向くのは直近1〜2社です。ここで具体的に語れる仕事があるかどうかが、回数の印象を上書きします。
逆に言えば、回数が増えたあとに効く手当ては「次の1社で結果を出す」しかありません。過去の回数は動かせませんが、直近の中身はこれから作れます。
回数が気になり始めたときにやること
不安のまま求人を眺めても、判断材料は増えません。次の順番で手を動かすと、自分の状態が見えます。
手順1|職歴を時系列で書き出す
会社名・在籍期間・職種を、紙かメモアプリに並べます。頭の中では長く感じていた期間が、書き出すと短かった(あるいはその逆だった)と気づくことがあります。
手順2|各社の「入った理由」と「出た理由」を1行ずつ書く
ここで飾らないことが大事です。「給料が低かった」「上司と合わなかった」で構いません。まずは事実だけを並べます。
手順3|出た理由の共通項を探す
3社ぶん並べると、たいてい似た言葉が出てきます。「裁量がない」「評価が説明されない」「人間関係」のどれかに寄っていることが多いです。この共通項が、次に外してはいけない条件です。
手順4|次の1社を「腰を据える先」として選ぶ
共通項が見えたら、次はそこを最優先の条件にします。給与や知名度より先に、その1点で絞ります。ここを妥協すると、また同じ理由で出ることになります。
この4手順は、転職するかどうかを決めていない段階でもできます。むしろ決める前にやるほうが効果があります。
転職すれば条件が上がるとは限らない
回数の不安と同時に持っておきたいのが、この前提です。
厚生労働省の「令和7年 雇用動向調査」を見ます。転職して入職した人のうち、賃金が前の職場より増加した人は40.8%でした。減少した人は31.0%です。前年と比べると、増加した割合は0.3ポイント上がり、減少した割合も1.6ポイント上がっています。
つまり、上がる人のほうが多いものの、全員ではありません。3割は下がっています。
回数を重ねること自体が損になるわけではありません。ただし「動けば上がる」という前提で、生活費を先に増やすのは避けたほうが安全です。給与が動く仕組みそのものは、20代で給料が上がらない理由|昇給の仕組みと上げ方の順番で整理しています。
※この章の数値は 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」より
職歴を書くときに迷いやすい3つの点
在籍期間が短い会社を省略していいか
省略はおすすめできません。回数が多いことより、隠したことが後から分かるほうが信頼を損ないます。社会保険の加入履歴などから、あとで食い違いが出ることもあります。
書いたうえで、理由を短く添えるほうが扱いやすくなります。取り扱いに迷う場合は、応募先の募集要項や専門家に確認してください。
短期間の在籍をどう説明するか
事実を短く述べて、そこから得た条件に接続します。長い弁明にしないことがコツです。
説明が長くなるのは、たいてい自分でもまだ納得できていないときです。手順3の共通項が出ていれば、自然と短くなります。
「またすぐ辞めるのでは」と思われないために
言葉で否定するより、条件で示すほうが伝わります。「今回はここを最優先で選びました」と、選んだ基準を先に言うと、繰り返しではなく学習として読まれやすくなります。
よくある質問
20代で転職3回は多いですか?
転職回数が多いと書類選考で落ちやすくなりますか?
在籍期間が短い会社は履歴書に書かなくてもいいですか?
まとめ
- 転職の回数を制限する法律はなく、「何回まで」という共通の基準も存在しない
- 20代で職場が変わること自体は例外ではない。令和4年3月卒の3年以内離職率は大学卒33.8%、短大等卒44.5%、高校卒37.9%
- 回数の代わりに見られているのは4つ。1社あたりの在籍期間、方向の一貫性、辞めた理由の説明、直近の会社での実績
- 同じ3回でも「3年・3年・2年」と「半年・8ヶ月・4ヶ月」では意味が違う。問題が回数ではなく短さにある場合が多い
- やることは4手順。職歴を書き出す、入った理由と出た理由を書く、共通項を探す、その1点で次を選ぶ
- 転職で賃金が増加した人は40.8%、減少した人は31.0%。動けば上がるとは限らない
回数を数えているとき、本当に気にしているのは数字ではないことが多いです。「自分は落ち着ける場所を選べないのではないか」という不安のほうが本体です。
その不安に答えるのは、回数を減らすことではありません。出た理由の共通項を1つ見つけて、次はそこを外さないことです。共通項が見えた時点で、4回目は3回目までとは別の意味を持ちます。
個別の労務や職歴の取り扱いについては、勤め先の就業規則や、社会保険労務士などの専門家に確認すると確実です。
参考
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(令和7年10月24日公表)
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
- 労働政策研究・研修機構「転職者の状況(ビジネス・レーバー・トレンド 2025年1・2月号)」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の労務相談に対する助言ではありません。 ※統計の数値は調査時点のものです。離職率・賃金の増減割合は集計値であり、個人の結果を示すものではありません。 ※採用の基準は企業ごとに異なります。応募先の募集要項および公式情報をご確認ください。
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